実践・小学校高学年
トイレ探検で「さまざまな性」を学ぶ
星野 恵 Hoshino Megumi 
小学校教諭
 
 
 ■こんなトイレに出会ったら何を思いますか?
 

 家にいても、外にいても、あらゆる場で利用するトイレ。家以外の場所では、トイレの表示を見て何の迷いもなく、自分の入るトイレを選択している人が多いことでしょう。
 ここに1枚の写真(写真1)があります。このトイレには「女性・男性を問わず ご利用いただけます」と表示されています。この見慣れない表示から、あなたはいったい何を思うでしょうか。
 マークから連想できる“体の不自由な人、お年寄り、子ども連れの人が性別に関係なく利用できるトイレ”ぐらいのことは、簡単に考えられるでしょう。でも、この表示をつけてほしいと願い出た人たちの存在に行き着く人はは、ほとんどいないのではないでしょうか。
 これは東京ウイメンズプラザ(東京都渋谷区)のトイレにある表示です。そしてこの表示をつけてほしいとお願いしたのは、「TSとTGを支える人々の会」という、性同一性障害の人々を支援する団体なのです(詳細は次ページの資料1を読んで下さい。)
※TS=トランス・セクシュアル。自分の「性自認」と生物学的な「性」とが違っていて、性転換をして自分の生物学的な「性」を変えたいと思う人。
※TG=トランス・ジェンダー。自分の「性自認」と生物学的な「性」とが違っていて、自分の生物学的な「性」と異なる「性」のライフスタイルで生きようとする人。
 いままで、学校の性教育の場でもほとんど取り上げることになかった、性的マイノリティーとしての性同一性障害、インターセックス(半陰陽)、同性愛などのさまざまな性を生きる人々の存在と思いを知り、より深い理解と共に生きる姿勢を養う第一歩としての学習を、トイレという言葉をキーワードにしながら試みてみました。

 写真1

 
 ■トイレで何をしているかな?
 

 あなたは、トイレで排尿以外に何をしますか? 新聞を読む、本を読む、今日の予定を考える、きっと一人で安心できる場として無意識のうちいろいろなことに利用しているのではないでしょうか。
 学習のはじめに子どもたちにも聞いてみると、なるほど予想以上にいろいろなことをしていました。

《家のトイレでは》
・本、マンガを読む。
・ゲームをする(家の人にうるさく言われないから)。
・ゲームが壊れたら直す(一人静かに集中できる)。
・兄弟げんかをして逃げる。
・しかられて悔し泣きをする。

《学校のトイレでは》
・内緒話をするのに二人で個室に入る。
・追いかけられて逃げ込む。
 プライベートな空間としてのトイレ。家のトイレは男女兼用の洋式トイレが主流で、性別を意識することはほとんどないと思いますが、一歩外へ出るとそうはいきません。否応なしに男女という二つの性に分けられ、それに応じた工夫が施されています。
 町のトイレはどうなっているのかを探検することで、新たな課題を探るために子どもたちは町へ出ていきました。

【簡単な授業の流れ その1】

学習内容 指導上の留意点、資料
・どんな場所にも必ずある、みんなが使う施設は何だろう。
・トイレは何をする場所だろう。
・家、講演、駅、学校、街角、店……
・排泄以外のこと
 一人だけになれる
 安心できる
 考え事ができる
・トイレにどんな工夫がされているだろう。
・町のトイレ探検をしてこよう。
・男女別の表示、オムツ替え用のベッド、からだの不自由な人が使いやすいような工夫など
 
 ■町のトイレを探索してこよう!

 学区内に公共施設も少なく、あまり繁華街にも行かない子どもたちなので、多くのことは期待せずに、トイレに入ったらとにかく探索してくることにしました。
 探検の観点は資料2のカードにあるとおりですが、この観点は教師の方から出してまったものなので、子どもたちに話し合わせるなかで決めていくと、もっとユニークなものが出てくることと思います。

【探検結果】

町のトイレの工夫
・オムツ替え用のベッドがある。
・車椅子で入れる個室がある。
・小さい子を座らせておける椅子がある。
・女性用トイレに男の子用小用がある。
・蛇口が自動栓。
・緊急時のためのブザーがある。
・使用後に自動的に水が流れる。
・化粧室が別についている。
・手を乾かす温風器がついている。
マークや色
・男は青や黒。女は赤、ピンク。
・マークも男がズボンや山高帽、女がスカートやつば広帽子。

【探検後子どもたちが出した疑問】

・なぜ性別によってマークの色や形がほぼ決まっているのか。
・オムツ替え用のベッド、小さい子を座らせる椅子はなぜ男性用にないのか。
・障害者用のトイレの数は足りているのだろうか。

 これらの疑問は、そのまま子どもたちの新たな課題として取り上げ、追及させていくべきことですが、その課題とは違った方向へ導きたいという私の意図があったので、別の機会にまわすことにしました。

資料2 トイレ探検カード
 
探検者氏名 探検日   月   日
 
探検場所  
マーク・色  
中の様子  
清潔度 A  B  C  D
工夫  
感想  
 

※この実践は“小学校の「性と生」の総合学習”(子どもの未来社)からの抜粋です。この本にはその他にもたくさんの素晴らしい実践が紹介されています。ぜひご一読ください。

 
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