性教育ニュース 【02/12/20】
「 厚生労働省の少子化対策を問う」

 
   先日、厚生労働省は少子化対策の一環として来年度から独身男女に出会いの場を提供する市町村事業を補助対象とする方針を固めた。日本では未婚出産が2%前後で、結婚が出産の前提であるため未婚率の上昇が出生率の低下につながるとのことだ。これまで厚生省諮問機関は「結婚する、しないといった多様な生き方を尊重する……」という文言を入れながら少子化対策を提言していたが、今年9月に同機関がまとめた報告は異なる。「お金だけで安心が得られない時代には生まれ育つ『命』とともに生きることが何ものにも代え難い喜び」「愛するものと共に子育てという生き方に『挑戦』できるように、精神的にも経済的にも自立した人間になるとが求められる」と訴えた。少子化に歯止めがかからない焦りがあるとしても、個人の「生き方」にも口をはさむとは、明らかに行政の行き過ぎである。すでに自治レベルではじめている「男女の出会いをすすめる県」は、予算のわりに成婚まで行き着く件数は少ない(島根県では4年分1800万円で成婚数3)。朝日新聞の1面で荻野アンナ氏は「男性の求める妻像と、女性の求める夫婦のズレが未婚化を招いているのに会わせても結婚しない。まず保育所を完備し、シングルマザーを援助すること」とコメントしている。

 朝日新聞の特集「結婚しない40代男」(11月1日)によると現在40代男性未婚率が16%、20年には24%になるという。行政が焦る本当の原因はこの現実で、今回の少子化対策は結婚できない中年男性救済とセットであることが想像に難くない。記事では一人の男性の声として「結婚相手は自分より年収が少ない女性。人生設計のイニシアチブをとりたいので」というものがあった。30代、40代男性は自分より階級(学歴・年齢・職業・収入・背丈)が下の女性を妻像として求める一方、現実の女性は大学進学率でも男性を上回り、仕事を持ち、結婚が全てではなくなった。自立し始めた女性の求めるパートナー像は多様化するだろう。しかし行政が救済したい男性と合致するとは考えづらい。

 結婚しても子を持たない(または出産しても一人)夫婦が増えている。フルタイムで働く女性は育児と仕事の両立が困難なために出産に二の足を踏む。しかし男性は自分間の育児負担を想定していない。このギャップが存在する限り、行政が期待する結婚=出産は期待できない。その一方、待機児童を抱え定職に就けないシングルマザーが存在するのだ。少子化を問題とするならば、荻野氏が指摘するよう、子を持ち育児をしようとする個人への支援を強化するしかない。

 国や社会から出会いや結婚にまで口出しし、税金をつぎ込むスタイルはかえって男性の自立を妨げる。「官製お見合い」はむろんのこと、住民税、保険料の控除・家族手当など結婚が前提の社会システムは結婚が当然だとの風潮をあおるため、未婚者にとって重圧になるだけで助けにはならない。出会いの機会や結婚した後の優遇措置以前に、彼らにとって本当に必要とされるスキルはパートナーへの理解力・想像力なのである。少子化対策を本気で考えるなら、結婚と出産は分けて考えるべきである。結婚や家庭や男性社会のプライドを引きずり続ける限りこの問題の糸口は見つからない。

静岡セミナー副実行委員長 楢原宏一

 
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