私たちは、子どもたちの豊かな成長を願い、平和な社会と、希望に満ちた未来を希求する「教育」を、創造してきました。
しかし、今世紀、「子どもの権利」、「平和」、「教育」に対する不当な「攻撃」が、始まっています。本日の集会でも、様々な立場の方からの発言により、学校教育、性教育にかけられている攻撃と、「不当な介入」の実態が、より明らかになりました。
子ども自身が、生まれてきたことを喜びと感じ、自立心を育み、自分や他人を愛することができるように、科学、歴史、平和、男女共修の家庭科など、さまざまな分野の教育実践の中で、「いのち」「からだ」「こころ」「愛」などのテーマが、取り上げられてきました。そして、「こころとからだ」の主人公となり、自らの「性」に誇りを持ち、主体的に生きるための「性教育」も、大切な教育課題として、研究協議をしながら実践を積み重ねてきました。
大人に近づくからだの変化に戸惑っている子、氾濫する性情報を選択する力を持てない子、性被害・性犯罪に巻き込まれていく子、性虐待を受けている子、性体験を急ぐ子。そして、急増する性感染症の低年齢化。子どもたちの現実を知るほどに、不十分、不正確な性の知識のままに、放置することなどできません。今回、攻撃の的にされた障害児学校は、目の前の子どもたちの現実を把握し、保護者の願いに応じ、教職員が話し合いを重ねながら、成長を喜びと捉えることのできる「性教育」を、学校として責任を持って推進してきたのです。
そうした研究や教育実践を、一体誰が、どんな意図で、実際の授業を見ることもせずに、「過激」「行き過ぎ」と決めつけ、批判しているのでしょうか。一部の都議会議員、一部メディアは、性被害にあっても、「お腹が痛い」としか訴えられない子どものために、世界23カ国で性被害防止教育に使われている教材を、「性交人形」と決めつけています。障害のある子どもの排泄指導のために、教職員が手作りをした教具などを、大切に保管してある保健室を、「アダルトショップ」のようと、報道しています。また、特定の組織が、インターネットなどにより、性教育に取り組む学校や個人を名指しにして、誹謗中傷を繰り返しています。
そして、2003年9月11日、東京都教育委員会は、「不適切な性教育」の問題を契機として調査した結果により、都障害児学校の教職員百16名の処分などを行いました。保護者や教職員と話し合うこともせず、一部の個人やメディアを利用した攻撃勢力の見解のみを全面的に受け入れ、教材教具を「押収」した都教育委員会の姿勢こそ、過激であり、行き過ぎています。
子どもの学習権を奪い、教職員の教育権を侵害し、保護者の願いに欺きながら、処分を強行した「ねらい」は明らかです。「指導要領」「指導案」により、教職員を締めつけ、管理職の権力を強化し、「子ども中心の学校」から、「行政の意のままに動く学校」に、つくりかえようとしているのです。
性教育を突破口とした学校への「直接的な介入」、見せしめのような「不当処分」は、教育基本法十条が禁止している「教育への不当な介入」そのものであり、権力による「弾圧」で、ものを言わない教職員を増やし、「教育基本法」改悪に、連動しようとするものです。
過去の歴史の中で、暴力を肯定する社会にあっては、当然のように弱者が差別され、女性や子ども、性的に少数者の人々への、性の人権侵害が行われてきました。私たちの国にも、国家にいのちを捧げるように教育し、人間の性の尊厳を踏みにじった「戦争」の傷跡に、今もまだ、苦しんでいる人々もいます。戦前戦中の反省から生まれた「憲法」や「教育基本法」は、歴史の到達点であり、そこに明確に示されている「教育は子どものためのもの」という真実だけは、いかなる権力にも、決して、譲り渡すことはできません。
都教育委員会に、訴えます。教育に携わる立場を自覚し、「先生、からだのことが書いてあったあの本は、どこにあるの」と、保健室に置いてあった副読本や書籍の所在を訪ねる子どもの声に、耳を傾けてください。「わが子を、性教育をしてくれる学校に通わせていることが誇りだったのに」と、教材の返還と「これまで通りの授業」を願う障害児学校の保護者たちの要求に、応えてください。子どもたちの性体験の低年齢化、性の商品化、性犯罪などの実態を知るためにも、教職員と十分に話し合ってください。世界の性教育実践から学び、正しい知識を伝えることにより、性行動に慎重になるという事実や科学を、正しく認識してください。「必要な条件整備の確立」を進める教育行政者としての責任を、果たしてください。
私たちは、教育・性教育への不当な介入に、強く抗議し、処分の撤回、一日も早い介入の中止、押収した全ての教材教具の返還を要求します。
「子どもの学習権」「子どもと保護者の幸福追求権」「教育における研究・実践の自由」への人権侵害に対しては、「人権救済」の申し立てを行います。
「子どもの側に立っていることがすでに勝利」と支援してくれる弁護士団、子どもの明るい未来を展望する保護者、教育実践を創造している民間教育研究団体、個人攻撃を支え共に闘う職場やサークルの仲間、それぞれの組合などが、立場の違いを越え、連帯の輪を拡げています。
今日、お集まりいただいた皆様方も、攻撃の不当性を、それぞれの地域・職場・保護者、所属団体、友人知人などに、お伝えくださることでしょう。 日本の子どもたちの、確かな未来を願う、全ての人々と共に、「子ども中心の学校と教育」を守るためのこの運動を、大きく発展させましょう。