昨年12月に荒川区男女共同参画社会懇談会が設置され、その構成メンバーをみて“えっ!これが男女共同参画社会づくりの公の会議?”と目を疑ってしまいました。17名の委員のなかに、林道義(東京女子大学、懇談会会長に選出)、高橋史朗(明星大学、副会長)、八木秀次(高崎経済大学)などのメンバーがそろっているではありませんか。
荒川区男女共同参画社会懇談会の場合はこれまでの国・自治体の男女共同参画のとりくみと全くちがった構図となっています。これまでは各地の男女共同参画条例の制定に際してバッシング(激しい攻撃)がおこなわれてきたのですが、本懇談会には男女平等の社会づくりに最も後ろ向きなメンバーが主要な位置を占めており、これまでにない最悪の「男女共同参画社会」づくりの方向が提示されることは火を見るより明らかです。
主要メンバーをみますと、高橋副会長は「新しい歴史教科書をつくる会」の副会長であり、八木委員は理事という重責を担っているメンバーです。この間の男女共同参画のとりくみに最も背を向けてきたのが「つくる会」の主要なメンバーでもあり、ジェンダーフリー攻撃と「つくる会」の運動は表裏一体の関係にあるということができます。
男女共同参画社会基本法に対して、林道義会長の主張を「林道義のホームページ」からみてみましょう。「男女共同参画社会基本法の危険思想」では「言葉の意味を明瞭に規定するという、法律の要件を満たしていない」「法律とは言えない法律」といい、「『男女共同参画社会基本法』は憲法違反の法律である」とまで言い切っています。「結局、男に家事や育児をさせようという思想」「専業主婦の存在は否定」「ファシズム的な発想」などの言葉が踊っており、「この男女共同参画社会基本法は極めて偏った思想に基づいた、きわめて危険な法律である。それは『専業主婦』と『母による育児』を否定し、家族の基本形態を破壊し、いわゆる『多様な家族』という名の『欠落家族』を増やす作用をするであろう」とまとめている。両性の平等をすすめる国の制定した基本法に対してこのような曲解と悪罵を投げつける人物が会長であることは公の懇談会としてはあまりにも異様な状況ではないでしょうか。
高橋委員は1月12日のテレビ朝日系列の「たけしのTVタックル」で“なんだかヘンだぞ!ジェンダーフリー論争!」で「本来の男女共同参画にジェンダーフリー思想が混乱を持ち込んでいるのではないか」などと発言しています。また「『男女共同参画』『性的自立・自己決定権』の名の下に社会解体を目指す新たな教育革命運動を断固阻止しなければならない」(『正論』03年4月号)、「男女共同参画とか福祉という名のもとで、実は人間の幸せ、例えば親子の心の絆というものがどんどん破壊されていく」(『正論』03年5月号)などと主張しています。ジェンダーフリーとは、性別にこだわらずに、すべての人間が自分らしくのびのびと生きることをめざしている行動規範です。より正確にいえば、ジェンダーバイアス(偏見)からフリー(解放)であることをめざした人権思想なのです。
このように最も男女共同参画に反対し攻撃をしている研究者がその中心に座っている懇談会の構成は異様です。懇談会設置要綱で「今後の検討課題」として、@性差とは何かということを踏まえた性差と教育の関係、A性差と分業との関係(性別役割分業)、B女性の自己決定権、C社会的保育と家庭教育、D荒川区の地域特性、E家庭教育・健全育成と男女平等、F家庭の絆を強めることと男女平等が掲げられています。わざわざ「今回の検討にあたっては、現在の区の推進計画を前提としない」と書かれています。男女共同参画の基本方向から逸脱した報告内容が出されてくることを想定することは難しくないでしょう。
荒川区がこうしたメンバーを選任したことは行政責任者としての見識が問われており、本懇談会をバックラッシュの新たな拠点にしない取り組みが私たちに求められています。
参考文献:浅井春夫・北村邦夫・橋本紀子・村瀬幸浩編
『ジェンダーフリー・性教育バッシング ここが知りたい50のQ&A』大月書店、2003年