私たちは、東京都教育委員会による七生養護学校に象徴される都下の公立学校の性教育への不当な介入に対し、「子どもの学習権」「子どもと保護者の幸福追求権」「教育における研究と実践の自由」を守るために結成された団体です。東京弁護士会への「人権救済の申し立て」を柱に広範な連帯と運動をすすめている団体です。現在、東京弁護士会への人権救済の申し立て人は6000名を超えており、さらに大きく広がりつつある状況です。
こうした状況は東京都教育委員会の性教育に対する方針、具体的な「指導」「調査」の実態に対する保護者・教師とともに学識経験者、さらに広範な都民の怒りが結実していることのあらわれです。
東京都教育委員会への要請
東京都教育委員会に対して、以下の内容について要請をするものである。
1)公開質問状の各項目に、誠意ある回答を求めるものである。学習指導要領を説明の論拠とされるのであれば、具体的な箇所・文章を示すことを求めるものである。
2)性教育実践者への不当な処分を即刻撤回すべきである。処分の理由はほとんど説明のないものとなっており、その意味でも原状回復を早急にすべきである。
3)これまで押収した教材等について、その明確な説明がされていないのであるから、けっして「廃棄処分」などの指示をすべきではないことをあらためて要請する。
4)このような各学校ですすめられている性教育を押さえつけ、学校に混乱を持ち込むような「指導」「調査」などは今後は中止し、これまでのものは撤回すべきである。
5)東京弁護士会の「人権救済の申し立て」に伴う貴教育委員会への調査などには積極的に協力されたい。
東京都教育委員会への提案
各学校で子どもの現実に応えることのできる性教育のあり方、具体化について研究することこそ指導すべきである。東京都における学校性教育のあり方について、多様な意見があることを踏まえて、現場教師、研究団体、研究者などが参加した広範で開かれた研究プロジェクトを設けることを提案し、早急に立ち上げを要請するものである。この提案についてぜひ真摯に検討されることを求めるものである。
東京都教育委員会への公開質問状
私たちは、この間、1月14日の東京都教育委員会への「調査中止の申し入れ」、人権救済申し立て弁護団による4月7日には教材等の扱いに関する申し入れ、8日にも“人間と性”教育研究協議会より同様の申し入れをおこないました。残念ながら誠意ある対応と回答は得ることができませんでした。これまでの状況を踏まえて、公開で質問をおこなうものです。誠意ある回答を求めます。
不当な介入、「指導」「調査」がどのような論拠をもっておこなわれているのかについて、以下の項目について質問をいたしますので、回答をいただくよう宜しくお願いいたします。
なお回答は、4月21日午前10時に、貴教育委員会を訪問いたしますので、文章にて回答をされ、懇談の場を持っていただくようお願いいたします。
またいただいた回答については、私どもの各団体のホームページにて公開することをご了承ください。
1)性教育は「依然として一部に学習指導要領や児童・生徒の発達段階を踏まえない指導が行われており、特に、小・中学校における性教育で使用している教材について、具体的にその実態を把握し指導する必要があります」と通知(巽公一・教育庁指導部指導企画課長名、2003年12月26日付)されている件について、
@子どもたちの性の実態をどのように把握され、発達段階についてどう考えるべきか具体的な説明をお聞かせいただきたい。
Aその依拠する学説、発達論を紹介していただきたい。
B文部科学省が推薦した教材に関して、都教委が「不適切な教材」と指定した際に、そうした実態は法律的制度的にどのような整合性があるのでしょうか。現場はどちらの見解に基づいて判断すればいいのでしょうか。
2)文部科学事務次官通知「小学校、中学校、高等学校等の学習指導要領の一部改正等について」(2003年12月26日付)では、最低基準性の一層の明確化が示され、「学校において特に必要がある場合には、この事項にかかわらず指導することができる」(第1章 総則)としており、事実上の“歯止め規定”の撤廃を意味していると考えます。また、文部科学省の『新しい学習指導要領についてのQ&A』で「学習指導要領に示されていない内容に加えて指導する場合に」ついて、「どのような内容を加えて指導するかは、各学校の判断です」と述べられている件について、
@性教育においても学習指導要領の最低基準を超えた内容に関しては各学校の判断に委ねられているのではありませんか。
Aそうでないといわれるのであれば、学習指導要領のどこにその根拠があるのかを示されたい。
Bとりわけ、性器の名称、性交、出産などについて、やはり歯止めがかかっていると考えておられるのであれば、その根拠を具体的に示してください。
3)小学校4年生で初経・精通を学ぶのであり、その際、性器の名称を使うことは必要不可欠であることは共通理解となっていると考えますが、小学4年生以前は性器の名称は、無名でいいと考えられるのでしょうか。
@ 性教育のテーマである「性器」についての学習は、どの学年で、どのような名称で教えるのが適切であると考えられますか?
Aとりわけ「からだうた」で、ペニスとワギナの名称をあげることはなぜ問題なのか、性教育に関する討議や実践のなかで性器の名称を正確に使うことがなぜ“問題“といわれるのか、その理由についてお聞かせ願いたい。
Bさらに、「ペニス」と「ワギナ」を使用すべきでないと指導されるのであれば、どの年齢で、どのような適切な性器の名称を使うべきであるのかを明示されたい。
4)エイズや性被害の防止教育の重要性は今日差し迫ったものとなっていると考えますが、
@「性交」「性器」のテーマにふれないで、HIV・エイズあるいは性的虐待(性被害)などのテーマをどのように扱うべきとお考えでしょうか?
A「不適切」な教材、適切な教材のポイントを明示していただきたい。
Bとりわけ、性教育用教具の人形および『せっくすのえほん』はなぜ「教材として不適格・不適切」なのでしょうか?教育現場でどのような使われ方をしていることが「不適切」であるのかを明示されたい。
5)「性交の仕方を具体的に示したり、連想させたりする」教材が「不適切」であるという論拠を示されている件について、
@性教育における「性交」のテーマはどのような意味があり、いかなる教育課題を持っているとお考えでしょうか。
A小・中・高等学校のすべての学年で「性交」のテーマを扱うことは「不適切」といわれるのでしょうか。
B「適切」であるという判断基準、それを超えるという判断基準についてどのようにお考えなのかをお聞かせ願いたい。
6)性器・性交・生命誕生のテーマに関して性教育をどのように具体化するべきと考えておられるのかを具体的に示していただきたい。たとえば、生命誕生のテーマで性教育をおこなうときに「産道から生まれてくる新生児を描いた絵本」を使用することは、なぜ“不適切“であるのかを示していただきたい。
以上ですが、どれも基本的な事柄に関わることであり、貴職ですでに十分に検討されていることと存じます。すみやかに誠意ある回答をいただくようお願い申し上げます。