性教育ニュース 【04/10/23】
2004年8月26日付け、東京都教育委員会通知
「『ジェンダー・フリー』という用語の使用に関する見解」
及び「『ジェンダー・フリー』にかかわる配慮事項について」への見解

 
 

 

2004年10月23日

2004年8月26日付け、東京都教育委員会通知
「『ジェンダー・フリー』という用語の使用に関する見解」
及び「『ジェンダー・フリー』にかかわる配慮事項について」への見解

“人間と性”教育研究協議会(性教協)

 東京都教育委員会(以下、都教委)は、2004年8月26日の定例教育委員会で、上記の通知を出して徹底することを決定しました。
 これらの通知に関して、もっとも問題と思える次の2点から性教協の見解を示し、これらの通知の撤回を要求します。

1 一方的な解釈による用語の使用禁止はあってはならない
 都教委通知の「見解」では、「・・・一部では『男らしさ』『女らしさ』をすべて否定するという意味で『ジェンダー・フリー』の用語が用いられる・・・」として、「東京都教育委員会は、男女平等教育を推進する上で、今後は、『ジェンダー・フリー』という用語は使用しないこととします」と通知しています。
 使用を禁止された「ジェンダー・フリー」という用語ですが、学研カタカナ語辞典では「社会的・文化的につくられた性差から解放すること」、三省堂カタカタ語辞典では「性差からの解放」と載っています。どこにも都教委のいう「男(女)らしさの全否定」という解釈はありません。また辞書によってはこの用語自体を掲載していないものもあり、まだ「ジェンダー・フリー」という用語が、日本では定着していないことを示しています。
 あえて、一般や教育現場にさえなじみのない「ジェンダー・フリー」という用語を大きく取り上げ、しかも辞書にもない稀な解釈を強引に持込み、その用語を禁止するという「言葉狩り」とも言える今回の都教委の「見解」は異常であり、「権力の濫用」の危険性さえはらんでいます。
 本来「ジェンダー・フリー」という用語は、アメリカのバーバラ・ヒューストンが「性別に関して存在する決めつけからの自由」、すなわち性別による偏見からの解放という意味で用いているのを、日本では東京女性財団が紹介し広まったものです。
 いまこの用語について必要なことは、上意下達的に禁止・制限することではなく、一般への真の理解を広めることです。その点で、今回の都教委「見解」は明らかに逆行であり、教育現場にいたずらに誤解と偏見をもたらすものです。

2 男女混合名簿の作成干渉は明白な教育内容への不当介入
 
また、都教委通知の「配慮事項」では、「男(女)らしさの全否定」という「見解」と同様の理由から「誤った考え方としての『ジェンダー・フリー』に基づく男女混合名簿を作成することがあってはならない」と通知しています。
 すでに説明したように用語の解釈自体、恣意的で強引ですが、さらにその強引な解釈の上に立って男女混合名簿の作成禁止を結びつけるこの通知は、矛盾の上にさらに矛盾を押しつけるものです。
 男女混合名簿に関して言えば、1985年国際婦人年ナイロビ会議で、男女混合名簿を使用していないのは日本とインドだけであり、「これは差別であるから早く変えるべきだ」との意見が出されたほどに、世界では一般常識化しているものです。
 日本でも、男女別名簿が男女の優先順位を固定化する考えに結びつくことから、その解消をめざして改善実施されてきたものです。この通知で都教委がいう「男女共同参画社会の実現に向けて男女混合名簿を推進してきた都教委の考え方」と本来の「ジェンダー・フリー」の主張とは何ら矛盾するものでなく、共通するものです。
 その点からも都教委通知の「配慮事項」の内容は一方的な決めつけの積み重ねで、あたかも主張が敵対するかのように思わせ、男女混合名簿の作成禁止に結びつけるもので、「先に男女混合名簿の作成禁止ありき」のねらいが透けて見えます。
 そもそも、どのような名簿を作成するかは、各学校が主体性を持って協議して決定するもので、教育内容そのものというべきことがらです。都教委による男女混合名簿の作成についての干渉は、教育内容への不当な介入であり、教育行政の範囲を逸脱しています。ましてや、この「配慮事項」では、男女混合名簿作成の理念にまで踏み込んでおり、逸脱の矛先が教育における思想信条や内心の自由にまで及んで、さらに違法性を増しています。

 以上のことから、都教委の通知は、教育現場に不安をつのらせ、無用の混乱をもたらすもの以外の何ものでもありません。いま都教委に要望されるのは、男女共同参画基本法に沿って「性別(ジェンダー)に縛られず、各人の個性に基づき共同」できるように、児童・生徒・教職員の個々の権利を保障し、個性豊かな学校教育を推進することです。その意味で、都教委に対し、これらの通知を一日も早く撤回して、信頼される教育行政の姿勢に立ち戻ることを要望します。

 私たちはこの見解の立場から、一層子どもたちのニーズと保護者の願いに沿うよう「誰もが平等に共同して、個性が発揮できる教育」を推進するため、現場教職員の実践研究に寄与し、励ますために全力を尽くしたいと思います。

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