暖冬とはいえ、春まだ遠き1月26日、一足前に温かさを感じさせてくれる嬉しい知らせが届きました。東京弁護士会が、都教委に対して人権救済の「警告」を出したのです。
七生養護学校の性教育などへの都教委らの不当な介入に対し、性教協は、関係する諸団体・サークルなどと手をつなぎ、「学校教育・性教育に対する不当な介入への対策連絡協議会」を立ち上げ、東京弁護士会に、弾圧ともいうべき性教育現場への介入に対する人権救済の申し立てを行なって参りました。映画監督の山田洋次さん、脚本家の小山内美江子さん、ジャーナリストの斉藤貴男さん、社会学者の上野千鶴子さんなど、著名人を含む、申立人は最終的には8125人にのぼります。
東京弁護士会の誠実で綿密な調査の結果として、1月26日、都教委に「警告」が出されました。この警告とは、要望、勧告、警告という段階の中で、最も厳しい内容のもので、東京弁護士会が、この間の性教育攻撃について、最大級の人権侵害で違法性が強いと警告を出したことに大きな意義があります。
性教協は、この件にさかのぼる1992年ころより、反社会的活動で有名な統一協会とそれに関連する団体や人物から、非科学的で嘘と偏見に満ちた多くの誹謗中傷を受けてきました。さらに2002年ころからは一部の国会議員と地方議員、一部メディアを巻き込み、この動きが大きくなりました。
その攻撃の論理と手法には何の正当性もないことは、私たち性教協のこれまでの主張で明らかですが、今回は法の専門家である東京弁護士会の判断でそれが証明されたことになります。
その意味で、東京だけでなく同様の攻撃がされている他地域でも、この警告は攻撃への有効な歯止め・反論となるものと考えます。
出された警告趣旨の要約は次の通りです。
1 都教委が都立七生養護学校(以下、七生)の教職員に行なった「不適切な性教育」を理由にした厳重注意は、子どもの学習権とこれを保障するための教師の教育の自由を侵害した重大な違法があるので、これらを撤回せよ。
2 七生より提出された(没収した)性教育教材一式を返還して、同校の性教育を「調査」以前に原状回復せよ。
3 都教委は、養護学校の性教育が教職員と保護者の意見に基づきなされることを鑑み、不当な介入をしてはならない。
警告書では七生の性教育は、児童生徒の実態をよく把握し、自己肯定感を持つための、具体的で分かりやすい性教育実践と評価され、攻撃以前は都教委からも異義がなかったと認定しています。
さらに、文部科学省、東京都、その他の一般的な性教育に関する戦後の政策の推移にも言及し、2002年度以降の都議会での学校への性教育介入やジェンダー・フリーにも踏み込み、「従来の方針から急転換したのは、東京都の性教育政策の方ではないか」ということにまで言及しています。
議員の学校現場「視察」についても設備の見学、中立的な質問にとどめられるべきであり、政治的意味合いの強い質問は無論のこと、暴言を吐いたり、わざわざ人形のズボンやスカートを下ろして床に並べ、新聞社に撮影させて、悪意に満ちた報道をさせるなどは、教育現場への行き過ぎた介入であり、「不当な支配」として教育基本法10条に違反であると断じています。また都教委には、教育の自主性、自律性を守るべく、政治的圧力に屈することなく、これを排除すべきであるとして、教育行政の責務からの逸脱を指摘しています。
介入の理由付けとなった学習指導要領については、「大綱的基準を示したにとどまるものであり、それに加えた内容を指導できると総則で記されていて、学習指導要領にないからということで適切さを欠くということはできない」としています。
これらの警告の内容は、今なされている性教育攻撃で、議会質問を利用する、あるいはその質問から指導要領を口実に議員や教育行政が教育内容に介入するという手法が人権侵害であり、法的に違反するということを明確にするものです。
あらゆる子どもたちに性も含めて安全で健康な成長を保障し、より幸せな自立を願うのは当然のことです。性を科学的に知ることが、子どもたちのより安全で慎重な行動を育み、性への無知が無謀な行動に走らせることは、北欧など性教育の先進国をはじめ、すでに世界的な基本認識です。この件でもそのような思いから、申立人や各種集会などで、立場を超えた多くの人たちに共同の輪が大きく拡がったことが、結果として今回の警告に結実したといえます。性教協からもあらためて様々な形で協力していただいた全ての人々に感謝の意を表します。
これら性教育への攻撃は例外なく理不尽なものですが、警告をより活かすためには、この件の事実と警告の内容を知らせ、共同の輪をさらに大きく拡げることが最も有効です。
性教育への攻撃を子どもたちの健やかな成長を脅かす、許せない人権侵害として、良識ある議員や地域福祉医療関係者、法律関係者、メディアをはじめ、あらゆる人に訴えて理解と協力を得て、教育行政や一部議員、一部メディアなどを包囲し、子どもの最善の利益を保障するあるべき姿勢に戻したいものです。
本件弁護団をはじめ、申立人は、都教委に警告どおりの改善と謝罪、七生以外での学校での性教育への介入の中止がなければ、法的措置も辞さないことを明らかにしています。
私たち性教協も、弁護団・申立人とともに共同の輪を拡げるために全力を尽くすとともに、子どもの実態や保護者のニーズにしっかりこたえる、性教育の理論と実践の向上に今後とも努力していくことを誓って声明とします。
みなさまのより深いご理解とご協力をよろしくお願いします。