性教育ニュース 【05/2/14】
「みんなの会」ニュース 第8号

 

 

2005年2月14日

「みんなの会」ニュース 第8号

学校教育・性教育に対する不当な介入への対策連絡協議会

 

 今年は少し早い「春」の到来です。私たちは2003年12月に東京弁護士会に人権救済の申し立てを行い、その勧告が出されるのを待ち望んでいました。それが1月24日付でなんと「警告」として出されたのです!
また、26日には東京弁護士会が都教育委員会に赴いて「警告書」を提出したといいます。
 私が「警告」が出されたことを知ったのは、夕方東京にいた時、NHKの首都圏ニュースを観たという仲間からの電話でした。直ぐ弁護士さんに確かめようと電話をしましたが、児玉・中川両弁護士さんは出張のため不在でしたので、分からないままでした。
 日が変わり明け方、帰京された弁護士さんからのメールで、『同弁護士会の人権救済には、要望、勧告、警告の種類があり、警告は人権侵害の度合いが最も強い場合に、侵害者に対し改善を求めるものであること、その上、「警
告」を発した日に、「警告書」を侵害者に提出する(「執行」という)のは異例のことである』と教えていただき、初めて「警告」が出されたことの意味が分かり、とても勇気づけられたものです。
 
「警告」はA4版25ページからなり、子どもの学習権、教師の教育の自由、教育基本法10条、学習指導要領、告知と聴聞などの諸点で、詳細かつ素晴らしい内容の指摘がなされています。
 また、私たちの主張を全面的に認め、経過
についても丁寧に事実認定をしていますし、教材についても、箱ペニス、からだ歌、人形とも適切な教材であること、都教委の姿勢は誠意に欠け、都議の行為は視察以上の違法なものと断定しています。

 以下、「警告書」と冒頭の「警告の趣旨」を紹介します。

                      

2005年1月24日

東京都教育委員会
教育長 横山洋吉殿

東京弁護士会
会長 岩井重一

警 告 書

 東京弁護士会は、申立人山田洋次、小山内美江子、斉藤貴男、川田悦子、堀尾輝久、蔦森樹、朴慶南ほか総数8125名による2004年1月7日付人権救済申立事件を受理し、調査した結果、以下のような人権侵害の事実があるものと判断し、被申立人東京都教育委員会に対し、次のとおり警告する。

警告の趣旨

1.東京都教育委員会(以下「教育委員会」ともいう。)は、2003年9月11日東京都立七生養護学校(以下「七生養護学校」という。)の教員に対して行った厳重注意は、「不適切な性教育」を理由にするものであって、このことは子どもの学習権およびこれを保障するための教師の教育の自由を侵害した重大な違法があるので、これらを撤回せよ。

2.教育委員会は、同委員会に保管されている七生養護学校から提出された性教育に関する教材一式を、従来保管されていた七生養護学校の保管場所へ返還し、同校における性教育の内容および方法について、2003年7月3日以前の状態への原状回復をせよ。

3.教育委員会は、養護学校における性教育が、養護学校の教職員と保護者の意見に基づきなされるべき教育であることの本質に鑑み、不当な介入をしてはならない。

都教育委員会・都議会への申し入れと記者会見をしました

 2/9(水)児玉・中川弁護士さんや申立人になっていただいている堀尾輝久先生、小林和さん、浅井春夫申立人代表など25名程で、「警告を受けての声明」と「申入れ書」をもって都教委・都議会へ申し入れをした後、記者会見をしました。
 また、都教委には教材返還を求める署名を3801名分提出しました。記者会見が控えていたので、申し入れについてはとにかく主張して手渡してきたという感じで、とりわけ都教委に対しては、あらためて懇談の場を設定させるように働きかけようということになりました。
 堀尾先生が予定を調整して参加して下さり、記者会見で教育行政が現場の実践をいかに大切にしていかなければならないか、教育基本法との関係でしっかりとお話しして下さり、また都教委に対してもっと市民の意見に聞く耳を持つよう働きかけていきたいし、記者のみなさんもそうした働きかけをと訴えられ、とても説得力がありました。
 記者会見では、中川弁護士のスムーズな進行で、児玉弁護士さんの警告書の重みと本日の行動の説明、浅井先生の性教育攻撃の本当のねらい、高柳美知子先生(“人間と性”教育研究所長)の人形に込めた思いとそれを踏みにじられた怒り…  特に私たちの後ろには8000名をこえる申立人と子どもたちがいます。それをしっかり見て記事を書いて下さいという訴えが心を打ちました。
 さらに、日野市民の会の小林さんから、警告書が決して七生の教育がすばらしいというような言い方ではなくて、とても抑制がきいた論じ方で「不適切とはいえない」「逸脱しているとはいえない」と述べていることに対して、これこそ本来の教育行政のあり方ではないかと言うことも、とても説得力がありました。
 洪さんからは保護者の思い、七生の性教育が保護者からとても信頼を得て行われていたこと、攻撃後のとまどいと混乱、あらためて元通りの教育を求める気持ちを語って下さいました。
 そして、中川弁護士さんの「百聞は一見にしかず」というリードで、からだうたの実演もしました。傍聴していた方の観察によれば、会見の後半になるにしたがって記者さんがひきこまれ頷きながらよく聴いて下さっていたそうです。とても残念なことに会見に参加された記者さんは、あまり多くはありませんでした。それは、先日東京弁護士会が行った会見と重複した内容をやるのではと思ったのかもしれません。しかし参加した記者さんたちには私たちの思いと真実が伝わったと思います。翌日は、毎日新聞の奥村記者が記事にして下さっていました。私たちのこれからの運動が、きっと今後のマスコミの関心を左右することになると思います。
 会見終了後のまとめでは、先ほど述べたように、期限を切って回答ない場合は提訴とするだけではなく、もう一方で都教委と懇談の場を求めるなど対話の方向も示しながら運動をすすめていこうということを確認しました。
 また、同様に都議会に対しても何らかの形で審議に反映されるよう働きかけていくことになりました。
 それから、事務局数人で警告書や声明・申入書をもって都議会政党回りをしました。
 受付の方や政調会、議員さんと対応される方はさまざまでしたが、「七生のこと」というと知らない人はいませんでした。
 弁護士さんと共に皆で作り上げた声明です。読めば読むほど励まされ、勇気づけられます。
 中川弁護士さんの言葉で言えば「ボディブローのよう」だそうです。

石原都知事 殿

東京都教育委員会 殿

東京弁護士会の「警告」を受けての声明

 本件事件は、2003年7月2日、東京都議会における都議の質問を発端に、7月4日、教育委員会、都議、日野市議らが七生養護学校を「視察」と称して訪ずれ、同校の保健室に保管されていた教材を提出させ、また同行していた産経新聞記者が教材を並べて写真を撮り、翌日の産経新聞に「まるでアダルトショップのよう」と実態に反した記事を掲載し、七生養護学校の「心とからだの学習」を過激な性教育だと決めつけ、実施できないようにし、教員らを厳重注意したというものである。
 2003年12月末、映画監督の山田洋次さん、脚本家の小山内美江子さん、学者の堀尾輝久さん、上野千鶴子さんら著名人を筆頭に多数の市民・専門家・保護者・教職員らが、東京弁護士会に対し、子どもたちの性についての学習権と自己決定権の保障を求めて人権救済の申立てをしたが、申立人はその後も次々と増え、現在は総数8125人に達している。
 これに対し、東京弁護士会は、2005年1月26日、東京都教育委員会に対し、「子どもの学習権とこれを保障するための教師の教育の自由を侵害した重大な違法がある」として@教員に対する厳重注意の撤回、A教材を七生養護学校に戻すこと、B性教育の内容及び方法を2003年7月3日以前に戻すこと、C教育委員会は不当な介入をしてはならないとの警告を出した。同弁護士会の人権救済には、要望、勧告、警告の種類があるが、警告は人権侵害の度合いが最も強い場合に、侵害者に対し改善を求めるものである。
 
人間にとって性は生に関わる問題であり、すべての子どもたちは、性の学習を通じて自らを高め人格を完成させてゆく固有の権利を持っている。他方、現在の情報化社会において、子どもたちは、ポルノ情報ともいうべき性情報に無防備なままでさらされている。正しい知識を得られないまま、ゆがめられた性情報だけがひとり歩きし、子どもたちを性の被害者、性の加害者へとおとしめ、子どもたちの成長を阻害している。子どもたちに必要なのは正しい性の知識と自己決定能力を獲得するための学習の機会であり、大人にはこれを保障する義務がある。このような日本の状況に鑑み、2004年1月には、国連・子どもの権利委員会からも、日本政府に対して子どもたちの思春期の性と発達について教育も含めて見直すよう勧告が出されている。
 七生養護学校の「心とからだの学習」は、子どもたちに性に関する科学的な知識と、自分を守り様々な人との豊かな人間関係を築く自立と共生について教え、生きていくうえで不可欠な自己肯定感・生きる力を与えるものであった。学習指導要領の趣旨にも合致し「行きすぎた性教育」などと批判されるいわれは微塵も無い。保護者と教職員が子どもたちのために工夫し積み上げてきたすばらしい教育実践であった。
 ところが、上記の都議らは七生の教育の現実の姿にはまったく目もくれず、最初から「不適切」と決めつけて学校を訪れ、養護教諭らに威嚇的な口調で質問したり、教材の人形に着せてあった洋服をわざわざ脱がせて下半身を露出させ床に並べる等したり、ことさらに「心とからだの学習」を否定し、卑猥なものとして取り上げた。これは、いやしくも議員の地位にある者の視察の名に到底値しない行為であり、憲法26条が保障する子どもたちの学習権とそのための教師の教育の自由を著しく侵害するものである。また、「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである」と規定する教育基本法10条1項に真っ向から反する重大な違法行為である。
 本来、東京都教育委員会は、このような政治的圧力が加えられようとした場合はこれに屈することなく、圧力を排除して教育の自主性を守るべき憲法上・法律上の職責を負っている。ところが、都教委は、漫然と上記都議らの行為を放置し、さらにはこれに同調する立場に立って一方的な「調査」を行い、七生養護学校教員らに「厳重注意」し、自らかかる人権侵害に加担した。これは、政治的圧力からの防波堤としてあえて独立した教育委員会を置いた法の趣旨に反する自殺行為であり、教育委員会の責任は重大である。
 今回の東京弁護士会の「警告」は、当事者双方に意見を求め、養護学校はもちろん幼稚園・小学校・中学校・高等学校・盲ろう学校に関する指導要領や性教育の手引き・指導資料等をもとに文部科学省・東京都ほかの性教育に関する政策の推移・内容をも子細に検討したうえで、本件人権侵害事実の実態を正確にふまえて判断したものであり、法律論も極めて手堅く説得的である。「警告」の内容が社会の多数の願いに沿うものであることは、本件人権救済の申立に対し短期間に前例の無い8000人を超える人々が申立人となった事実からも明かである。
 申立人は、東京都教育委員会が、東京弁護士会の警告に従って、「教員に対する厳重処分の撤回」「没収した教材の返還」「以前の性教育への復活」「不当介入の禁止」をすることを求める。そして「これらの憲法、教育基本法に違反した違法な今回の行為によって被った生徒、教員、保護者らに対して謝罪をし、精神的被害を回復すること」「東京都内の他の学校においてもなされている性教育に対する攻撃や人権侵害をやめること」を厳に申し入れる。人権侵害にあたる作為については以後それをせず、侵害状態の是正に作為を要することがらについては遅くとも2004年度(平成16年度)末日までに是正のための行動をとることを求める。そして、万一、この期間内に、何らの是正も図られない場合には、申立人らは本件申立の原因となった行為の人権侵害性、およびその人権侵害性を認識しながら放置した更なる違法行為を理由に裁判所へ訴訟提起するとともに、国連の子どもの権利委員会への報告措置をとることも辞さない所存である。

 以上を明らかにし、東京弁護士会の警告をうけての声明とする。

2005年2月9日

申立人

8,125人代表
浅井春夫・斉藤弘子・高柳美知子・中原正木・他

弁護団

児玉勇二・窪田之喜・齊藤園生・杉浦ひとみ・中川重徳・木村真実・西田美樹・田部知江子・山下太郎・伊藤敬史・小林善亮・山下敏雅・渡邊隆・稲見秀登・坂本雅弥

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