性教育ニュース 【05/3/10】
3月4日 参院予算委員会での性教育に関わる審議に対する私たちの見解

 

 

2005年3月10日

3月4日 参院予算委員会での性教育に関わる審議に対する私たちの見解

“人間と性”教育研究協議会 幹事会

 3月4日、参院国会に於いて山谷えり子議員(自民党)が質問した性教育をめぐる「問題」について、長年この分野の教育に取り組んできた実践・研究者として、その発議から審議の全経過にわたり、強い批判と抗議の気持ちを持つに至った。ここにその見解を明らかにするとともに、今後への要望を提示したい。

1) 学校の授業をめぐる問題の改善は、教育に直接責任を負う教師と保護者の努力によって、それぞれの学校において図られるべきものである。
2) 今回のように教育の現場を飛び越えて、保護者の訴えという形での意見を国会議員がいきなり委員会の場で「問題」として取り上げるなど、極めて異常なことといわねばならない。
3) しかも、授業に使われたという一部の資料のみを取りあげ、授業者や学校に対し、それがどのような目的のもとに使われ、授業全体の中でどのように位置づけられ、子どもたちはどのように受け止めたか確かめるなど、授業の本質的なことに全く触れることなく、「過激」「ゆきすぎ」と断じるなど性教育を攻撃するために意図的に仕組まれたものとの印象が強い。
4) こうしたやり方は、現場の教師の教育努力を無視し踏みにじる乱暴な教育介入と考えざるを得ない。
5) 指摘のあった学校で、実際にどのような授業が行なわれていたかは具体的には知る由もないが、一般に小学校段階で性交を扱う場合、いのちについて考え学ぶ学習として、そのいのちの成り立ちの過程で、どのようにして精子と卵子は合体・受精するのかという疑問に対応して、取りあげるのであって、委員会で話題にされたように「性技術」(山谷発言)を教えるために行なうようなことなど考えられない。
6) ところが議員の中には、使われた資料の図などを、これまで性教育を受けたことのない大人の感覚で、「卑猥」「猥褻」と直感的に受け止める傾向が強い。今回の委員会の様子を見ると、はからずもそうした“大人”が持つ固定的な性のイメージに引きずられ、ニヤニヤした笑いを伴いながら話が展開されていた。このことは、誠に残念であると同時に極めて不快であった。
7) 今日、ゆがんだ性情報が氾濫する中で、さまざまなトラブルや犯罪に巻き込まれる子どもたちが増えている。性の教育は、こうした時代や社会のもとで、いのちの大切さを学び、性の被害者にも加害者にもならず、しっかり生き抜く力をつけるうえで、ますます重要性を帯びてきている。そのためにも、自分のからだやいのちの成り立ち、しくみを知ることが、生と性の主体者を育てる大切な基本的学習の一つであることは明らかである。
8) 当日、文部科学大臣は、周囲の発言に押される形で、実態調査をする方向で検討したいと思うと発言されたが、万一調査するのであれば、保護者からの声があった学校で、実際にどのような授業が行なわれていたのか、授業の全体、授業者の考え、学習した子どもたちの意見や保護者の声などを客観的につかみなおすことから、先ず始めるべきである。
9) そうした努力もせずに、使っている資料のあれこれによって、結果として、授業の中身・評価を一方的に断ずるような「調査」になるとしたら、それは決して性教育の改善に役立たないであろう。
10) 私たちは、今回の参院予算委員会での性教育をめぐる「問題」の出し方、取りあげ方、審議の進め方について強い批判と抗議の意を表すとともに、今後の「調査」についても、教育現場の主体性を損なわず、子ども・教師がより意欲的に学び、取り組む展望が開かれるためのものとなるよう、強く要望するものである。

 尚、性の教育は子どものいのちと健康、そして人格の形成や将来にわたる幸福な人生にとって重大な意味を持つ大きな教育課題である。ところが、本文にも若干示したように、ビデオで視聴する限り、委員会の様子は真摯な議論というには程遠かった。誠に憂うべきことである。議員諸氏に猛省を促したい。

<付記>
 山谷議員は質問のための資料として、「セックス人形」(山谷発言)の写真を提出されたが、私たちが知る限り、教育の現場ではこんな言い方はされたことがない。
 また、都立養護学校において、こうした人形など多数の教材を東京都教育委員会は「不適切教材」として強制的に没収し、関連して多数の教職員を処分した。こうした措置に対する“人権救済の訴え”を受けた東京弁護士会は、一年に及ぶ調査の結果、子どもの学習権、教師の教育の自由を侵害した“重大な違法”行為と認め、“警告書”を出し、教材の返還と教職員の処分撤回などを都教委に命じている(2005年1月24日)。
 こうした事実を山谷議員はご存じなかったのか、全く触れられなかったので、あえて申し添える。

「人権救済の訴え」についてはこちらをご覧ください。
東京弁護士会の「警告」に関する性教協の「声明」はこちらをご覧ください。
東京弁護士会の東京都教育委員会への「警告」の全文はこちらをご覧ください。

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