|
@からだ観
各年齢を通して基本的にまず育てたいことは、命やからだを肯定的に受け止める「からだ観」ではないだろうか。生きている自分のからだ、他の人のからだというものを大切なものと思え、尊重してゆく姿勢である。
幼少期、小学校低学年、そして障害児には、基本的にからだの各部分についての理解からはじまり、その中で、大切な部分のひとつとして性器を捉えさせる。性器が排泄器としての役割も兼ねていることから、その健康を保たせるためには、排泄時の処理の仕方をきちんと教えることが大切である。
そして日常、性器の清潔を保つ習慣を身につけさせる。つまり、入浴時の性器の洗い方も教える。「性器は大切にしよう」ということと、性器の自己管理の基本を身につけさせるのである。それと同時に性器がプライベーゾーンである意識を育てる。人に見せたり触らせたり、人のものを無理に見たり触ったりすることは、人権の問題であることを理解させる。「とても大切なところだから」「相手が嫌がるようなことはしない」というような子どもに分かる言葉に工夫する必要がある。
A性をめぐる人間関係の学習
また、この頃から、命の始まりについての疑問がわき、男女の違いやその発達といった性的な関心も持ち始める。それを親や先生などの大人に疑問を発してくる場合が多いので、それを受け止め、逃げずに、真実を、子どもに分かる言葉で教えてゆくことが非常に大切である。
小学校での性教育は、人間の性的な生き方の基本を作っていく意味で意義が深い。現在の日本では、子どもたちにも性的な情報が否応なしに入ってくる状況であることを考えると、そういった情報に接しても揺るがない子どもを育てたいと考えれば、その情報の3倍くらいの性教育が必要ではないだろうか。
というのは、そのような情報は刺激的で、興味をそそる手口で浴びせられている。その中で、賢く、真実をつかみ、自分を大切にして生きてゆく力をつけさせるためには性教育がたっぷり必要だと思うのである。性器についてしっかり理解し、性交についてきちんと把握させるべきである。
その際、人間にとって性交とはどんな意味を持つものなのかということを各年齢に合わせた言葉で、理解させる必要がある。「性交教育」というラベリングをする人がいるが、性交のハウツーを教えるかのような捉え方をされるのは情けないことだ。
つまり、人間にとって性交の持つ意味を考えさせ、生殖の性として、また人間関係の性としての理解をさせることが必要なのである。そこで初めて子どもたちは、自分の存在の意味を知り、自分の命を肯定的に捉えることが可能になるのではなかろうか。深い豊かな人間関係の中の性というものをしっかり捉えられている子どもは、例えば、何かの歪んだ情報に接しても、それに対する批判力が働く。簡単にはだまされたり、揺らいだりしない子どもになるのではないだろうか。
B思春期の性と自己肯定
思春期を迎え、からだの変化が始まり二次性徴が現れてくるころ、それに伴う不安や悩みも多くなってくる。性器の発育・発達により起こる月経・射精について、それを肯定的に受け止めることのできるような学習ができることは、その人の人生観を築く上でも大切であると言える。子どもを産むためだけの機能ではなく、大人の女(男)として生きてゆくための発育・発達であるという肯定的な捉え方で、学習させたい。
大学の先生たちが、学生たちの無知を指摘している。それは、高校までにいかに性教育がなされていないかということであり、その結果、非常に低いレベルでの悩みを持っていることが分かる。受けるべきときにきちんと性教育を受けられなかった人たちの悲劇である。最も基本的な知識である月経・妊娠・出産のメカニズムを、学習してこなかった男子が多いということだが、女子学生の知識レベルも低い。科学的でしかも感性豊かな指導の工夫がほしい。
Cマイノリティの性
からだについての理解の上に心の発達、そして人間関係へと内容を発展させていく時に、性的な心の働き「性的指向」について必ず取りあげ、”同性愛””性同一性障害””インターセックス”等のマイノリティの性についてきちんと理解させることは重要である。子どもたちの中に当事者がいるという前提に立ち、すべての人の人権を意識した授業を進めるべきである。
授業では、私が実際に会った人たちの話や、その人たちの著書を紹介したりして進めていくが、子どもたちは自然に聞いてくれ、その受容力にこちらが驚かされるくらいである。授業後、マイノリティの当事者の生徒から相談を受けたこともあり、授業の必要性を痛感した。
D恋愛学習
人間関係に関する内容で、取り上げるべき項目としてはまず「友情」「恋愛」があるが、それらが破綻したとき、例えば「失恋」といったことも学習するべきだと思う。現在、ストーカー殺人とか、断られた腹いせの暴力事件などが頻発しているが、人間関係の破綻のケースを、成長のチャンスにして生きていく能力を培うため、シミュレーションなどで、学習する必要があるのではないだろうか。「性欲」「性交」といった人間関係の濃密な関係に関する内容について扱うときは、お互いに納得した状態であり、病気の感染や、望まない妊娠の心配のない状態であることが必須条件であることを理解させる。ケースを想定して、子どもたちにディスカッションさせるのも良い方法である。
Eいのちの学習
「妊娠」「出産」「避妊」「人工妊娠中絶」そして「不妊症」「人工授精」「代理母」という命に直接触れるものには、事実を把握したり、現状の分析ができるような資料としっかりした解説が必要である。「避妊」においては、「コンドーム」と「ピル」について、正しい理解と実行できる能力を育てることが必要であり、そこには男女共に、女性の体への深い理解とその健康を守る意識が大切で、話し合い、協力する必要性を認識させることである。
F性感染症・エイズ
「性感染症」「エイズ」について、他人事と思わずに、自分の問題として捉えられるような工夫が是非必要だ。特にエイズの感染爆発が4、5年後に予想されるという問題もあり、また、クラミジア等の性感染症の感染はHIVの感染率を数倍にすることから、予防するための知恵を持たせることと、その実行力をつけることは急務である。
G性と社会・歴史「家族」「女性と労働」について、自分の生き方を考えさせ、、パートナーや周囲の人たちとの関わりについて調査研究をさせたり、討論のテーマにもできる。生き方の多様性についても考えを深めさせたい。
また、人間の性と生を阻むものとして「戦争」の問題は大きい。「戦時性奴隷」としての「従軍慰安婦」について高学齢の子どもには是非学習させたい。そこで「人間の性とは」という観点で、原点を見つめて考えを深める機会にすることができる。
|