|
とめどない商業主義がすすむなか、子どもたちを取り巻く性の環境も悪化しています。若桑みどりさんは日本のコンビニや電車での性描写をビデオ・スライドで紹介して、次のように言いました。「公共空間における看板、電車中吊り広告、公共彫刻などと、私的空間におけるTV、CM、雑誌、新聞などにおける女性を性的な身体として展示し、男性の欲望を喚起することで利益に結び付ける日本社会は欧米メディアと比較にならないほどで、購買欲刺激のため男性の性的欲望が性の商品化によって刺激され煽られる。モノ化された男性が女性を性的モノ化している。それが日本での性的犯罪(拉致誘拐、強姦、痴漢、セクハラ、DV、強制売春、性的殺人)の日常化をもたらしている」。
この大人のつくった環境は子どもに大きく影響しています。子どもたちの性の環境を悪化させているのも、子どもたちの性をり利用するのも大人がつくりだした社会です。このような状況下で、無知で無防備なまま、性につまずく子どもたちが後を断たないのが、残念ながらいまの日本の現状です。
しかし、日本ではその子どもたちを保護するのではなく、少年法「改正」による厳罰化と同じく、子どもたちの自己責任として処罰の対象にする動きがあります。一昨年6月に成立した「出会い系サイト規制法」では、買春を勧誘する書き込みを禁止し、違反した児童も罰則が科されることになりました。この法案審議時の調査では児童の処罰対象化に「賛成」が66%、「しかたない」も26%に達しました。大人の中でも弱者をかえりみない自己責任化が進むため、子どもさえも社会悪から保護される存在ではなく、厳しく取り締まる対象とみなされてしまっているのです。
子どもたちをとりまく社会の荒廃も深刻です。子どもが被害にあう事件があちこちで起こり、強盗犯罪や性犯罪の被害件数が急増しています。警察検挙率も20%へ激減するなど、日本の安全神話が崩壊しています。
また家庭も崩壊ともいえる状況になっています。家族と家族を結ぶ地域社会と家族内での相互のコミュニケーションの機会が奪われ孤立化しています。いま多くの家庭で、男性はリストラの不安から過労死するまで仕事に追われ、女性は仕事(多くはパート)と家事・育児の両方をこなさなければならなくなっています。子どもたちも塾や習い事、夜遊び、アルバイトなどで帰宅時刻遅くなり、それぞれ全く交流できずにいる傾向にあります。
大人以上に子どもたちにとっては乳幼児期から「自己肯定」の基となる周囲とのコミュニケーションは欠かせません。いま共同体としての地域や家族の交流を豊かにして、子どもが子どもらしく生活できる環境をどのように再構築するかが緊急の課題となっています。社会と若者の性と生日本で進む失業や不安定な雇用の増加は、働く者を二極分化させ生活にも困る弱者層を増やし社会不安を増大しています。その社会的弱者化が著しいのが若者層です。いま15歳から34歳の若者の5人に1人がフリーターで総数417万人、高卒就職者では31%がフリーターです。フリーター全体の72%が正社員を希望しているにもかかわらずこの状況です。正規雇用と非正規雇用を比較すると、時給は半分以下、月平均収入では4分の1となります。失業率も若者層では一般の2倍にもなり、大卒者の就職者割合も激減しています。
働き方も過密長時間化傾向にあり、余暇での地域社会や家族、若者どうしの時間の共有が難しくなってきています。
これらの社会的条件の改善こそ急がなければならないのですが、少子化対策や一部メディアなどには若者個々人のライフスタイルの多様化に責任転嫁し、逆に一定の家族観を押し付ける傾向もみられます。
このような厳しい現状は、若者から未来の展望や希望を奪い、すべてに「いまさえよければ」という傾向をもたらしています。性も同様で、セクシュアリティが日常での豊かな関係性を紡ぎ合うものではなく、刹那的、消費的、享楽的になる傾向にあります。
性愛が安心や安全、信頼を築くのではなく、それ自体が即席化、目的化して依存や支配の対象となる、そんな若者が増えているのです。テレビ・雑誌には恋愛していなくては価値がなく不幸と思わせるような「恋愛至上」のメッセージがあふれ、テレクラや出会い系サイトがそのための即席の出会いの場を提供しています。さらにもっと手短かに金銭で性を売買する性産業はいまや3兆円産業となり、多種多様化しています。
性行動が活発化する時期の若者層がこれらの影響を最も強く受けるため、その性愛に自分や相手を思いやる市民的モラルや健康への配慮といった未来展望が入る余地は少なくなる傾向にあるのです。
性は文化ですから、この関係は最近の「食文化」における即席化、孤食化、外食化、非安全化によく似ているというとわかりやすいでしょう。貧困化はあらゆる面で多様性を奪い「そのときだけを生きる」という最低生活レベルに落とし、性の文化をも貧困化させるのです。
|