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「あっ!そうなんだ!性と生」著者によるリレー講座

 本書の著者5名による記事が新婦人しんぶん「ジェンダーリレー講座」に連載されました。本書の内容の紹介もあります。ぜひご一読ください。

幼児期からの性教育1 中野 久恵

暮らしの中ですでに始まっている性教育
 子どもたちから、「女の子にはオチンチンはないの?」「赤ちゃんはどこから生まれるの?」などと、聞かれたことはありませんか。からだや性について話すのはまだ早いと思ったので笑ってごまかしたことはないでしょうか。おとなの反応から子どもは、「このようなことは聞いてはいけないの?変なことなの?」と否定的なメッセージを受け取ります。
 トイレットトレーニングの過程で、男女による排尿のしかたの違いに気づき質問することもあるでしょう。からだの各部位の名称は、「手、足、口・・」などと自然に覚えていきますが排泄器(性器)は「オチンチン」とか「あそこ」などと正しく伝わっていません。絵本などを参考に性器の名前を知ることは、からだや性を肯定的に受け止めていく初めの一歩になります。幼児期の性教育は、おとなが意識するしないにかかわらずすでに暮らしの中で始まっています。
子どもの疑問にどうこたえたらよいか?
 子どもは成長の過程で、自分のからだへの興味を持つとともに、おとなや異性との違いに気づきます。聞かれた時がチャンスです。子どもたちの疑問にこたえる時に大切なことは、ごまかさないということです。そんなときに活用して欲しいのが絵本『あっ!そうなんだ!性と生』(エイデル研究所発行)です。この本は、子どもの疑問や子どもに伝えたいことを21テーマに絞って書いています。その中の一つをご紹介します。

性器いじり(子どもの自慰)にはどう対応したら良いの?
 自慰は、子どもにとっても自然な行為です。子どもの性器いじりは、性器周辺に皮膚のトラブルを抱えていないかの見極めをしなくてはいけませんが、トラブルがなければ生活の中になにかストレスを感じていないかと見直してみること、一緒に遊ぶなど他に興味を持てる関わり方をしてみることです。性器を触ることの気持ちよさを感じている場合は、人に見られない場所ですることがマナーであることを伝えましょう。
( "人間と性"教育研究協議会代表幹事、公立小学校元養護教諭)

*この記事は、新婦人しんぶん「ジェンダー・リレー講座」(2014年5月15日)に掲載したものです。

幼児期からの性教育2 安達 倭雅子(わかこ)

なんでペニスはかたくなるの?
 たとえば、三歳児があなたにこう尋ねるとします。「触っていたら、ペニスが堅くなったよ。なぜなの?」と。
 こんな場合、大切なことは、子どもにわかりやすく科学的に事実を伝えることです。
「ペニスの中は、スポンジのようなものでできていて、触って気持ち良くなると血液が集まってかたくなる。勃起(ぼっき)っていうよ。男の子にはだれにでも起こることよ」。これで子どもの興味は満たされてしまうかもしれません。しかし、興味が持続できているようなら、触らなくても、自分の気持ちとは関係なくかたくなることを伝えましょう。そして、ペニスの洗い方も入浴の際などに教えておきましょう。包皮をからだのほうにひいて、お湯をかけてペニスの先を洗い、包皮をもとに戻すこと、肛門のまわりも優しく洗うことを。2〜3歳を目安に性器を自分で洗うトレーニングを男の子も女の子も始めることが、「からだは自分のもの」というからだ観を育てることにつながります。

射精ってなあに?
 小学生は「射精ってなあに?」と、尋ねるかもしれません。
 「男の子は、たいていの人が11歳から13歳くらいになると勃起したペニスの先の尿道口から精子が混じった精液が出てくるようになるよ。これを射精っていうよ。精液は白くとろっとしているよ。」

おしっこと精液は混じらないの?
 「尿道口から出てきても精液とおしっこは混ざらない仕掛けがちゃんとあるよ、射精するときは膀胱の下の筋肉が閉じるので混ざらないよ。」
 話しておきたいことはたくさんありますね。子どものこうした質問に対して、私たちおとながしてはならないことは、絶句したり、「そんなこと尋ねちゃだめ」と否定したり、「ねえ、テレビ観る?」などと話題を変えてごまかすことです。
小学校高学年になると精通(初めての射精)を迎える子どももいます。精通は、夢精より自慰による経験のほうが多いという統計があります。射精を通してからだや性がプライバシーであることを学んでいきます。その時期の男の子への対応は、部屋に入るときは声をかける、ノックするなどの配慮が必要です。
 子どものからだはおとなへ変化していくのですが、その変化について無知であること、知識がないことは不安なことです。性やからだについても、知は力です。からだが変化する前に、科学的で正確な知識を十分に持つことは安心なことなのです。
( "人間と性"教育研究協議会幹事、電話相談員)

*この記事は、新婦人しんぶん「ジェンダー・リレー講座」(2014年6月19日)に掲載したものです。

幼児期からの性教育3 星野 恵

月経ってなあに?
  女性と月経は自分のからだと向き合う上では切り離すことのできないことです。今回は初経を迎える前の子どもたちに月経を語っていくうえでのポイントをまとめたいと思います。

月経について語る大前提は
 "自分のからだから血が出てくる?えっ?いつ、どこから ?" "いやだな いたくないのかな?"など話し方によっては子どもたちの中に「?」マークだけが並んでしまいます。だからこそ幼いうちから、自分のからだと関連付けて外性器や内性器の名称や位置などについて絵本を使って学ぶことが大切なのです。そうしていれば、初経を迎える前にからだの外側に起きる変化(性毛が生えてくる、乳房が大きくなってくる)やからだの内側で起きる変化(卵子が育ちはじめる、月経の仕組み)を語ることは容易になっていきます。

こんなふうに語ってみましょう
多くの女の人は、10歳〜16歳の間に月経がはじまり、およそ50歳前後まで続きます。女の人のからだは、子宮というところで赤ちゃんを育てるためにいつも新しい血液を含んだ膜を用意しています。赤ちゃんを育てないときは新しいものに取りかえるために血液をふくんだ膜をワギナの出口から、からだの外に出します。それを月経といいます。生理ということもあります。月経のときは血液が着ているものにつかないようにナプキンを使います。

語る上での注意
 月経がいつ始まるのかは誰にもわからないこと、でも"下着にいつもと違う色のものがついていたら始まる合図"ということを語っておくと、心の準備だけでなく、ナプキンやショーツの準備もできると思います。また早い遅いには個人差があることも押さえておく必要があります。早い場合は3年生くらいで初経を迎える子もいます。そんなときに一番身近な女性である母親が「えっ、もうなったの、早すぎるわね」なんてことを言ったとしたら、その子にとって月経とは限りなくマイナスなものとしてインプットされることでしょう。また初経を迎えたからといって、いきなり「赤ちゃんを産めるからだになったのよ。おめでとう!」と言って、お赤飯が出てくるというのもいかがなものでしょう。
 月経を出産にいきなり結びつけるのではなく、あくまでも自分のからだの状態を知っていく上でのバロメーターとして位置づけ、経血の状態や量に注意したり、カレンダーに記録する習慣をつけることを一人の大人の女性としてアドバイスしていけたら素敵ですね。
( "人間と性"教育研究協議会幹事、公立小学校教員)

*この記事は、新婦人しんぶん「ジェンダー・リレー講座」(2014年7月10日)に掲載したものです。

幼児期からの性教育4 北山 ひとみ

赤ちゃんはどうやってできるの?
自分のいのち、どうやって?
 自分が生まれる前はお母さんのおなかのなかにいたということは、身近に妊婦さんの姿を目にしたりするうちにわかってきますが、どうやってお母さんのおなかに入ったのだろう、と、子どもは不思議でたまりません。「お父さんに似ているね」などと言われると、ますますわからなくなります。そのことをお父さんやお母さんに尋ねるのは、自分はどうやって生まれてきたのか、自分のいのちはどうやってできたのか、ということを知りたいからなのです。

しくみを科学的に
 「赤ちゃんはお母さんのおなかからどうやって生まれるの?」ということも、子どもたちは知りたいことです。帝王切開という方法もありますが、陣痛とともにワギナから生まれることが多く、出産のしくみを伝えるには、まず赤ちゃんが育つ場所である子宮と産道となるちつ(ワギナ)があることを教えることが必要でしょう。
 赤ちゃんが子宮の中で育つことがわかったら、「赤ちゃんのいのちのもとは何だろう?」ということが知りたくなります。いのちは、男性が持っている精子と女性のおなかの中にある卵子が一つになって受精卵になることではじまります。どうやったら精子と卵子が一つになれるのかが、子どもにとって大きな疑問であり、その疑問に正面から答えていくことは、自分のいのちの成り立ちを知る上で欠かせないことなのです。それは性交を伝えていくことになりますが、子どもが知りたいのは卵子と精子がどうやって出会うか、のしくみなので、受精に至る過程を科学的に伝えていけばいいでしょう。
 精子と卵子が出会うには、ペニスをワギナに入れて精子を卵子の近くに送ること、精子は空気に触れると生きていけないのでこの方法が一番安全に送り届けられるということを話すと、子どもはペニスの形がホースの形をしていることにも納得します。

子どもの疑問に真剣に
 受精のしくみを教えるには性交を伝えることになるので、大人にとっては話しにくいことです。でも、自分のいのちはどうやってできたのかという、子どもにとってとても大切な疑問に真剣に向き合ってくれるかどうかということは、この先の信頼関係を築く上でとても大切なことであり、何よりも子どもが自分自身を大切に思えるかどうかにもつながっていくことです。すぐに応えることができなくても、「大切なことだから後で教えてあげるね」と、こころの準備をしてから話してあげて下さい。いのちの成り立ちのしくみを知った子どもは、大きな安心感を持つはずです。
("人間と性"教育研究協議会幹事、和光小学校、和光幼稚園 校園長)

*この記事は、新婦人しんぶん「ジェンダー・リレー講座」(2014年8月7日)に掲載したものです。

幼児期からの性教育5 浅井 春夫

嫌なことをされたとき
 子どもたちの暮らしは、地域では性被害、学校では性的いじめ、家庭では性的虐待など、いつでも、どこでも、誰でも性的人権が侵害される可能性の中にあります。
公園で「私の飼っている子犬が迷子になったので、いっしょに探してくれない?あのトイレの裏の方に逃げたんだけど…」という誘いに、子どもたちは平均35秒でだまされてしまうという実験結果があります。学校では性的いじめはだんだんと陰湿で深刻になっています。自らの「からだの権利」を守るちからを子どもたちにはぐくむことがおとな・教育の課題としてあります。

はっきりと「やめて!」が言えるように
 性被害に対して、まずファーストコンタクトに適切な対応ができるかどうかが重要です。性器やからだの学習がないまま、プライベートパーツ(口、胸、肛門、性器)を特定して教えるだけでは効果はあまりありません。むしろ小さい子どもたちはからだをコントロールされる状況になってしまえば、あとは加害者の思い通りになってしまいます。
性被害をプライベートパーツへの接触に限定するよりも、からだすべてが私だけのもので、いやなことをされたら、「やめて!」ということ、すぐその場から逃げることが大事なこと、そのうえでできるだけ早く身近なおとな(親、先生、学童保育指導員など)に出来事を話すことを、日頃から繰り返し伝えておくことにしましょう。

「からだの権利」を守る感覚と行動力を
 性被害に抵抗・拒絶するためのコミュニケーションのスキルを伝えることが大切です。
性的虐待には、直にからだにさわる接触虐待だけではなく、写真の被写体にするなどの非接触虐待もあります。実際に子どもたちが性被害から自分を守るちからをはぐくむという点から、大声での「わ〜」「おまわりさ〜ん」の叫び声が有効です。「きゃー」「たすけてー」では日常的な騒音やふざけに聞き取られやすく、非日常的な「わ〜」や「おまわりさーん」の叫びの方が危険を受けとめてもらえる点で効果的なのです。

世界の性教育の流れに合流を
 「国際性教育実践ガイダンス」(International Technical Guidelines on Sexuality
Education,2009)で、性教育の推進がユネスコやWHOなどの国際4団体から提示さ
れ、性教育の基本方向と内容は明確に示されています。
 性を学ぶことは、人間の形成に必要なちからです。世界の教育や子育ては、性を語ることを子どもの発達保障の課題として位置づけて取り組んでいます。わが国も世界の大きな流れに合流し、子ども・人間を大切にする国になるために、性教育を本格的に教育現場に根付かせていきたいものです。
("人間と性"教育研究協議会代表幹事、立教大学コミュニティ福祉学部教授)

*この記事は、新婦人しんぶん「ジェンダー・リレー講座」(2014年8月7日)に掲載したものです。

幼児期からの性教育6 中野 久恵

読者の質問に答えて・上
Q幼児期を過ぎたら、手遅れですか?
  からだや性の話をするのは、気がついた時がスタートです。
連載の中で、幼児期からすでに性教育は始まっていると書きました。おむつ替えのとき、性器にやさしくタッチしながらきれいに拭いてもらい、子どもが心地よさを感じて育つことは性教育の第一歩ともいえます。肌と肌の触れ合いの心地よさの延長に愛着関係が育っていきます。
しかし、子どもが小学校高学年や中学生、あるいは大学生や社会人になっていても性の学びを始めるのに遅いということはありません。
 子どもの年齢によっては、いきなりからだや性の話をするのは難しいかもしれません。思春期を迎えた子どもたちは、自分の体形や容貌などがどう見られているのかをすごく気にしています。また、無性にイライラする、怒りっぽくなるなど精神的に揺れ動く時期にいます。そのような時期ですから、ちょっとしたことで、親の方もつい説教口調になってしまうこともあります。この時期の親子関係で大切なことは、幼児期のタッチングにかわって、「聞くこと」ではないでしょうか。
この時期は、親以上に友だちの存在が大きくなり他愛のないおしゃべりにまじって相談もするようになります。しかし、友だちに相談すると冷やかされたり、それがもとでいじめの対象になったりすることもあるので相談できない子もいます。男子は自分の性器の悩みを抱えていることも多く、ネットの間違った情報に振り回され、悩みを深めてしまうということも多々あるようです。電話相談にアクセスする力がある子どもは救われます。
 親のできるかかわりとして、きっかけは、本を手渡すこともよいでしょう。また、テレビを見ていて、性に関する場面になった時に「どう思う?」と子どもの感想を聞くことがきっかけになる場合もあります。あくまで子どもの話を聞くことがスタート。つい、親の言い分をしゃべってしまいがちなので気をつけたいですね。

Q異性の親と入浴、いつまでしてもよいの?
 子どもたちは、性ホルモンの働きで月経や精通を迎えるようになります。月経や精通を迎えるということは、胎児側の視点から、自分が赤ちゃんを「産む」「産ませる」可能性がある視点にかわってきます。
 親であっても、母親を異性の女性、父親を異性の男性と認識するようになります。そう感じることは、当たり前で正常に発達しているということです。個人差はありますが、異性の親との入浴は一つの目安として小学校3年生くらいまでといえるかもしれません。
("人間と性"教育研究協議会代表幹事、公立小学校元養護教諭)

*この記事は、新婦人しんぶん「ジェンダー・リレー講座」(2014年9月18日)に掲載したものです。

幼児期からの性教育7 中野 久恵

読者の質問に答えて・上
Q幼児期を過ぎたら、手遅れですか?
 母親であろうと父親であろうと、同じではないかと思います。
 つい子どもに「女の子でしょ」「男のくせに」と男女により生活面で使い分けていませんか。
 たとえば、「身の回りの整頓ができる」「料理ができる」「人にやさしくできる」「泣きたいときに泣ける(感情を表現できる)」などは男女にかかわりなく身につけてほしいことです。 
 だから、男女による社会的な性差(ジェンダー)を固定しないような向き合い方が求められていると思います。

Q 息子の性教育は父親にまかせたいが、父親が協力的でない
 父親が協力的ではない理由の一つは、父親自身が性について学んだという体験が少ないことがあります。曲がりなりにも女子の月経学習はあっても、男子の射精学習は少ないのです。男女のやわらかな共生関係には、男子は女子の、女子は男子の性を学ぶことは欠かせないことなのです。この際、母親も男子の性について父親と一緒に学ぶことをお薦めします。「精通(初めての射精)はいつだったの、どんな体験だったの?」など聞いてみたらどうでしょう。性について夫婦で話すことができるようになることも家庭での性教育の初めの一歩ではないでしょうか。
 からだの奥から突き上げてくるような性衝動をどう受け止め、向き合っていくのか男子の自立(親離れ)していく過程で欠かせない課題なのです。性衝動は生理的なものですが、性行動は、自分でコントロールすることが必要です。性的緊張の高まりを自慰により解消できることが大切なのです。そのような情報をしっかりと伝えたいものです。
 たとえば父親が、「父さんもしたよ、今でもすることがあるよ。悪いことではないよ、むしろ性的な緊張を自分で解消することができるためには必要なこと、ただし、誰にも見えない場所(プライバシーが保てる空間)で行うことがマナーだよ」などとポイントを話せると良いですね。
同性の親がかかわる利点があるとは言っても、今はシングル家庭も多いわけで、本来、一人のおとなとして、異性であろうがなかろうが、自分のからだ、性とどう向き合うべきかを自然に話し、わかることはアドバイスし、わからないことは正しい情報への出合い方を教えてあげればいいのだと思います。特にこの時期好きな人ができたりすると人生の一大事のように、悩んだり、喜んだり、悲しんだりするものです。そんなときこそチャンス!いろんな話ができる関係が築けるといいですね。
("人間と性"教育研究協議会代表幹事、公立小学校元養護教諭)

*この記事は、新婦人しんぶん「ジェンダー・リレー講座」(2014年11月6日)に掲載したものです。
書名:あっ!そうなんだ!性と生
       幼児・小学生そしておとなへ
編著者:浅井春夫 安達倭雅子
     北山ひと美 中野久恵 星野恵
絵:勝部真規子
発行所:エイデル研究所
定価:2000円+税 
版型:B5 頁数:80(カラー48頁)










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