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性教協声明(2023年2月21日)

「社会が変わる」ための
    包括的性教育をともに進めましょう。

〜岸田政権における
 ジェンダー・セクシュアリティ差別の助長と放置を受けて〜

「社会が変わる」ための包括的性教育をともに進めましょう。
  〜岸田政権における
    ジェンダー・セクシュアリティ差別の助長と放置を受けて〜
  
(1)
2月3日夜、荒井勝喜総理秘書官が、首相官邸での「オフレコ」取材に際して次のような発言をしました(2月4日付毎日新聞による)。
 (同性婚制度の導入について)社会が変わる。社会に与える影響が大きい。/マイナスだ。秘書官室もみんな反対する/見るのも嫌だ/同性婚を認めたら国を捨てる人が出てくる。
 これは性的マイノリティに対する差別発言であり、私たち性教協は強く抗議します。
 岸田首相は「岸田政権は持続可能で多様性を認め合う包摂的な社会を目指すと申し上げてきた。
荒井秘書官の発言はこの政府、政権の方針とは全く相いれないものであり、言語道断だ。厳しく対
応せざるを得ない」として、荒井元首相秘書官を「異例」の速さで更迭しました。この更迭自体は
当然のことと言えるでしょう。
 しかし、岸田首相の「岸田政権は多様性を認め合う包摂的な社会を目指す」という言明は真実で
しょうか。

(2)
 2023年2月1日にひらかれた衆院予算委員会で、立憲民主党の西村智奈美代表代行から同性婚を認める法制化への見解を岸田首相が問われた際、岸田首相は次のように答弁しました。
 (同性婚の法制化は)「極めて慎重に検討すべき課題だ。こうした制度を改正することになると、日本の国民すべてが大きな関わりをもつことになる。社会が変わっていく問題でもある。すべての国民にとっても家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だ。」
 この答弁における「(同性婚は)社会が変わってしまう問題」は、荒井秘書官と同じく、同性婚をネガティブなものと捉えているからこそ生まれる表現です。
 岸田首相はその後の国会答弁で、「国民に幅広く関わる問題であるという認識のもとに"社会が変わる"ということを申し上げた」「議論まで否定しているとか、決してネガティブなことを言っているのではない」と釈明していますが、とうてい納得できるものではありません。
 私たちは、岸田首相が、社会を悪しき方向に変えるものとして同性婚をネガティブに捉えていることを指摘せざるを得ません。
 また、「変わってしまう」と岸田首相が危惧する「家族観」ですが、日本において「伝統的」とされてきた家族観は、性別役割分業論に根差したジェンダー・セクシュアリティ差別を内包したものではなかったでしょうか。ジェンダー・セクシュアリティに関する研究者、そして運動実践者、教育実践者たちがこのことを繰り返し問うてきました。
 岸田首相が、ジェンダー不平等と多様性の排除が中心となっている「伝統的」な家族観の変化を
ネガティブなものと捉えていることを指摘せざるを得ません。

(3)
 岸田政権においては、『新潮 45』における、「子どもをつくる」という「生産性」の有無により社会保障の可否を語る「優生思想」的な差別発言、および性的マイノリティに対する数々の差別発言を繰り返してきた杉田水脈衆議院議員を総務大臣政務官に任命し、「職責を果たすだけの能力を持った人物と判断した」と 評価して起用しつづけていました。「岸田政権は多様性を認め合う包摂的な社会を目指す」という首相発言が空虚なものに映るのは、こうした事実があるからです。
 私たち性教協は、 杉田水脈発言をはじめ、国会議員、地方議会議員による性的マイノリティへの差別発言の問題性をこれまでも繰り返し指摘してきました。今回の差別に対しても強く抗議すると
共に、以下の点を表明します。
 日本で暮らす人びとの「代表」として選出されている国会議員の皆さんは、これらの差別問題に 一貫している、あらゆる人びとの人権を保障する社会づくりを阻害する差別についての議論と、権 利保障のための政策立案、そして制度的基盤の整備に関する知見を深め、真摯に学びなおし、そし てあらゆる属性のマイノリティを排除・抑圧する現行の制度を見直して制度的基盤を整備してくだ
さい。

(4)
 私たち性教協は、日本で暮らす人びとすべてが、この差別問題をじぶんごととして「大きな関わ り」をもって考え、差別のない社会に向けて、現在の「社会が変わっていく」よう政治にはたらき かけることを強く望みます。
 私たちは、人権と科学を基盤に置いた「性教育」・「包括的セクシュアリティ教育」推進のための教育制度整備を強く求めます。この問題をめぐっては、昨年8月には日本財団が「包括的性教育の 推進に関する提言書」を発表し、さらに今年1月には日本弁護士連合会(日弁連)も「『包括的性教育』の実施とセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツを保障する包括的な法律の制定及び制度の創設を求める意見書」を発表しています。
 生涯にわたる教育による発達の重要性を問うてきた私たちは、差別発言に関わった当該議員はも ちろん、かれらの差別性に気付けなかった大臣・議員・官僚等の方がたが、「人権としての性」を真摯に学ぶことを強く求めます。

(5)
 私たち性教協はこれからも、差別のない対等かつ平等な社会を希求します。あらゆる人びとが排除・抑圧されない社会を目指すために、志をともにする皆さんと連帯していきたいと考えます。
 そのような社会は、性的指向、性自認および性表現、個々の身体の違いを尊重し、またセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツを保障する社会のことです。
 こうした社会を実現するために、「科学・人権・自立・共生」という性教協の四つの柱を再度確認し、多様性と平等、個人の尊厳と人権の尊重を基本とした包括的性教育を進めていきます。

2023年2月21日

一般社団法人"人間と性"教育研究協議会幹事会
 


  性協教声明:「社会が変わる」ための包括的性教育をともに進めましょう

 

 

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